するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションと云う声がしたかと思うと、目の前がさあっと明るくなり、気が付いてみると、ジョバンニは、親友のカンパネルラといっしょに、ごとごと ごとごとと、小さな列車にのって走っていたのだった…。
銀河を走るその鉄道は、人々の透明な意思と願いをのせて、生と死のはざまを、かけぬけていく。
賢治童話を代表する作品。そしてその絵画化に50年の時をかけて挑み続けた金井一郎。
その幻想的な独自の画法は、見る者を銀河へと誘い込む不思議な力を持っています。
まさに決定版ともいえる傑作!
【プロフィール】
絵●金井一郎(かない いちろう)
1946年、埼玉県生まれ。生家は明治から大正時代にかけての日本絵本の創成期に名を残す「金井信生堂」。金井が小学生の頃に家業を廃業。転居などの環境の中で孤独な心情をかかえていた小学校四年生のときに出会った宮沢賢治作品「銀河鉄道の夜」が決定的な出会いとなる。少年時代の強烈な読書体験は、いつしかそれを自分なりにビジュアル化したいという熱意へとつながっていった。十代の終わり頃から影絵での制作を始め、その後、黒い紙に針で無数の穴を開けて下から光を通すという「翳り絵(かげりえ)」の手法を見い出し、五十年近くにわたって「銀河鉄道の夜」の絵の制作を続けた。
絵画制作のほかに、乾燥させた植物の中に小さな光を仕込んだ灯りや、物語性にあふれるオブジェなども制作している。
●使用画材:翳り絵(かげりえ)(黒い紙に針で無数の穴をあけ、下から光を透過させる)/用紙:黒い紙2枚(間にアクリル版を挟んで重ねる)
【発行日】2013年10月19日